スケールとゲージ (Scale and Gauge)
鉄道模型のスケールとゲージに関するページです。あまり面白くないかもしれませんが、予備知識としてまとめました。なんでZゲージは1/220なんだろ?って思ったことありませんか?(笑)
軌間とは
線路の幅のことなんですが、かつてはレールの中心からとかいろいろあったようですが現在ではレールの内側の最短距離を測るということになっています。実物も模型も同じです。
実物の軌間 (Gauge/Spurweite)
模型のスケールとゲージに入る前に模型化の元になっている本物の軌間(ゲージ)について見てみましょう。
フィート・インチ表示 |
mm表示 |
備 考 |
7 ft 1/4 in | 2150mm | イギリスの一部の鉄道で1890年まで使用 |
5 ft 6 in | 1676mm | アルゼンチン、ブラジル、USA(一部)、チリ、カナダ、インドなど |
5 ft 5 1/2in | 1668mm | スペイン、ポルトガル |
5 ft 3 in | 1600mm | アイルランド、ブラジル、オーストラリアなど |
5 ft | 1524mm | ロシア、フィンランド、パナマなど |
4 ft 11 in | 1495mm | カナダのTronto Transit Commission |
4 ft 10 in | 1470mm | USAの中西部で南北戦争後まで使用 |
4 ft 8 1/2 in | 1435mm | 標準軌 もっとも多くの国で採用 |
1372mm | 日本(京王など) | |
3 ft 6 in | 1067mm | オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、コスタリカ、日本、台湾など |
1050mm | ヨルダン | |
1000mm | アルゼンチン、ブラジル、スイス、ベトナム、中国、インド、スペインなど | |
3 ft | 914mm | USA(コロラド)、カナダ、ペルー |
838mm | 旧南海電鉄 | |
785mm | ポーランド | |
30 inch | 762mm | |
760mm | ブラジル | |
750mm | ポーランド、ロシア | |
610mm | ||
600mm | イギリス、インド、ポーランド、USAなど | |
597mm | イギリス |
グレーの標準軌に対して、ピンクは広軌、ブルーは狭軌(ナロー)ということになります。なぜ1435mmが標準軌なのかというと多くの国で採用しているからです。日本のJRで見慣れた1067mm幅は10ヶ国程度で元々イギリスの植民地だったところが多いです。各国で採用している軌間はそれぞれ歴史的な背景もありますから、一概には言えませんが狭軌を採用する理由としてコスト面以外にも山岳地帯で車両を軽くしたい、トンネルや橋の建設を楽にしたいというのもあります。南アフリカ(1067mm)やスイス私鉄(1000mmメーターゲージ)がその例でしょう。
1000mm未満の軌間に関しては、どちらかというと軽便鉄道的なものが多いと言えるでしょうね。もしかするともっと種類があるかもしれません。広軌に関してもいろいろですが、ロシアやスペイン、ポルトガルが広軌を採用している理由として、戦争時に物資輸送ができないようにするためだと聞いたことがあります。補給路を確保するという戦略上もっとも重要な部分を最初から断ち切れるというわけですね。もっとも現代のように相互乗り入れをするようになると軌間の違いは不便ですね。今ではパリ-マドリッド間をTGVが行き来してますから、幹線はスペインでも標準軌になるのかもしれません。
単位のお話(Imperial Units)
模型のスケールやゲージのお話に行く前に長さを測る単位のお話です。日本を始め多くの国では、国際単位系を使用しています。いわゆるメートル法ですね。しかし、イギリス、米国ではいまでもヤード・ポンド法での表記も多いです。イギリスでは1995年に国際単位系に移行し、2000年からはヤードポンド法を禁止しています。(イギリスではヤードポンド法ではなくてImperial Unitsと呼ぶんですか!)米国も徐々に移行する気配はあるものの法律上では禁止されていませんからまだ野放し状態です。みんなで同じ単位を使った方がいいと思いますが、慣習というものもありますからねぇ。明日からヤード・ポンドに変わるって想像してみてください(笑)
軌間もフィート・インチ(注:単数形ではFootなのですが、日本語表記はフィートに統一します)が元々の単位になっているものとmm単位のものがあります。お気づきの方もいると思いますが、フィート表示をそのまま計算してもmmとは合わない場合があります。この辺はどう解釈していいのか私もわかりません。
単位 |
国際単位系 |
|
1インチ(1 inch,in) | 1/12フィート | 2.54cm |
1フィート(1 Foot,ft) | 1/3ヤード | 30.48cm |
1ヤード(1 yard,yd) | 0.9144m (基準として定義) | |
1ポール(1 pole) | 5.5ヤード | 5.0292m |
1チェーン(1 chain) | 4ポール | 20.1168m |
1ハロン(1 furlong) | 10チェーン | 201.168m |
1マイル(1 mile) | 8ハロン | 1760ヤード、1.609344Km |
1リーグ(1 league) | 3マイル | 4.828032Km |
表を見ていただくとわかるように国際単位系ではヤードを基準に定義されていますから、例えば1フィートだと1/3ヤードという表記の通り計算するわけです。かなり端数が出ますね(笑)
ポールとかチェーンなんて無意味そうですが、例えば面積の単位でエーカーというのがありますね?(映画とか観ていると出てきませんか?)1エーカーは1チェーンX1ハロンで4840平方ヤード、約4047平方メートルです。ま、普段使うことはなさそうですが・・・・
スケールの規格 (Standards)
ようやく模型の話です(笑)スケール模型は実物の何分の一という表記がされています。Zゲージならば1/220ですね。個人で楽しむ分にはスケール(縮尺)は何分の一でも構わないのですが、製品として流通させるためには同じスケールにした方がパーツを流用できたり、鉄道模型ではインフラである線路を共有できたり便利です。欧米では
2つの団体があり、鉄道模型でのスケールを定義しています。米国では1940年設立のNMRA、ヨーロッパ(東ヨーロッパ、イギリスを除く)では1954年設立のMOROPという団体です。
NMRAのWebサイト http://www.nmra.org
MOROPのWebサイト http://www.morop.org
スケールの定義はNMRAではS-1.2、MOROPではNEM010で規定しています。その中から一部抜粋します。規格は上記URLからダウンロードできますので詳細はそちらを参照してください。
NMRAでのスケール定義(Oゲージ以下の小さいものだけ抜粋です)「”」はインチの略です。
Alpha Numeric |
Common/Fractional |
Scale to Foot |
Proportion |
Track Gauge |
O | 1/4″ | 0.250″(6.35mm) | 1/48 | 1.250″(31.8mm) |
On3 | 1/4″ | 0.250″(6.35mm) | 1/48 | 0.750″(19.0mm) |
On30 | 1/4″ | 0.250″(6.35mm) | 1/48 | – |
On2 | 1/4″ | 0.250″(6.35mm) | 1/48 | 0.500″(12.7mm) |
S | 3/16″ | 0.188″(4.76mm) | 1/64 | 0.883″(22.4mm) |
Sn3 | 3/16″ | 0.188″(4.76mm) | 1/64 | 0.563″(14.3mm) |
OO | 4.0mm | 0.157″(4.0mm) | 1/76.2 | 0.750″(19.1mm) |
HO | 3.5mm | 0.1378″(3.5mm) | 1/87.1 | 0.649″(16.5mm) |
HOn2 | 3.5mm | 0.1378″(3.5mm) | 1/87.1 | 0.276″(7.0mm) |
TT | 0.100″(2,54mm) | 1/120 | 0.470″(12.0mm) | |
N | 0.075″(1.9mm) | 1/160 | 0.353″(8.97mm) | |
Nn3 | 0.075″(1.9mm) | 1/160 | 0.256″(6.5mm) | |
Nn2 | 0.075″(1.9mm) | 1/160 | 0.177″(4.5mm) | |
Z | 0.055″(1.39mm) | 1/220 | 0.257″(6.52mm) |
米国NMRAの規格ではアルファベットだけは標準軌(4 ft 8 1/2in)を縮尺したもの、nが付くとナローを表してその後ろに付く数字が1個ならフィート、2個ならインチを表します。つまりOn3は1/48だけれども線路幅は3フィート(914mm)のナロー、On30だと1/48だけど線路幅は30インチ(762mm)のモデルだということになります。Oゲージの1/48は1フィートを1/4インチに縮尺したので1/48ですね。(1フィートは1/12インチだから)ところが、OOから話は違いますね。OOはイギリスの規格なんですが、これは1フィートを4mmに縮尺したものです。なのでインチにするとすごく中途半端な数字になっているわけです。イギリスでは4mmスケールなんて呼ばれたりもします。OOは19.1mmという線路幅になってますが、規格上では16.5mmから19.1mmと注釈が付いてます。
HOはOゲージの半分でハーフOだからHOと言われますが、だったら1/96になるわけで実際は1フィートを3.5mmに縮尺したというのがNMRAの規格です。ですから正確な縮尺は1/87.1ですね。
MOROPでのスケール定義(2番ゲージよりも小さいものだけ抜粋です)
Ratio |
Scale Meter in mm |
Scale |
Corresponding model gauge for given prototype |
|||
1250 to 1700 | 850 to 1250 | 650 to 850 | 400 to 650 | |||
1/220 | 4.5 | Z | 6.5 | |||
1/160 | 6.3 | N | 9 | 6.5 | ||
1/120 | 8.3 | TT | 12 | 9 | 6.5 | |
1/87 | 11.5 | H0 | 16.5 | 12 | 9 | 6.5 |
1/64 | 15.6 | S | 22.5 | 16.5 | 12 | 9 |
1/45 | 22.2 | 0 | 32 | 22.5 | 16.5 | 12 |
1/32 | 31.3 | I | 45 | 32 | 22.5 | 16.5 |
1/22.5 | 44.4 | II | 64 | 45 | 32 | 22.5 |
Auxiliary letter to be appended to the scale: | – | m | e | i |
欧州MOROPは国際単位系を使ってるのですっきりしてますね。規格書を見るとわかりますが、O「オー」ではなくて0「ゼロ」になってます。HOも「エイチオー」ではなくてH0「エイチゼロ」の表記です。I番ゲージの下だから0「ゼロ」なのかどうかわかりませんが、米国と表記が違うのも面白いですね。(ちなみに規格はVI番まであり)縮尺も1メートルを何mmにしたかというところで半端な数字が出てこないのもNMRAよりわかりやすいです。こちらの規格はスケール重視で、軌間に関しては例えば1250mmから1700mmはZゲージなら6.5mmという決め方をしています。いろんな線路幅がある欧州ならではの決め方ですね!下の方に書いてある「m、e、i」はナローの区別を示すものです。例えばHOmならば1/87で線路幅は12mm(実際の線路はメーターゲージの1000mmということ)になります。HOeならば1/87で線路幅は9mmになります。Nmならば1/160で線路は6.5mmになり、NMRAのNn3と同じスケールということになりますね。
いろいろ考察
数字ばかりで頭痛くなりましたか?(笑)
鉄道模型はスケール(縮尺)とゲージ(線路幅)が両方絡んできますから、ややこしいですね。元の車両がフィート・インチで設計されているのか、メートル・センチなのかで縮尺も簡単に割り切れる方にしたいと思うでしょう。もしくはゲージを何分の一にする方を先に決めてそれから・・・。なんでNゲージは1/160で9mmにしたのかはアーノルトに聞かないとわかりません(笑)でも、想像するに標準軌の1435mmを10mmにして1/143.5にするよりも9mmにすりゃ1/160じゃないかと結論を出したんじゃ?でも10mmで1/144にしとけば、プラモデルと同じサイズになったのに・・とかいろいろ考えちゃいますね。ドイツ人だから1フィートを1/12インチにする1/144には興味ないのとH0の半分くらいのサイズにしたいと思ったのか。
Zゲージは1mを4.5mmにするのを基準としてますね。5mmにして1/200にした方が計算が楽だろ!と突っ込みを入れたいところですが、そうするとゲージが7.1mmになってしまいますね。Nゲージのナローを考えた場合、6.5mmにしとけばメーターゲージになるわけで、そこまでメルクリンが考えたのかどうか知る由もありませんがなるべく他のスケールにも流用できると流通量も増え、一石二鳥くらいに考えるのが常識的です。ナローも網羅して考えてるのが欧州的です。
NMRA、MOROPの規格は推奨している標準規格です。いわゆる工業製品として流通させるにはこうした方がいいでしょうというもの。模型は自己満足の世界だと思っておりますので、フリーランスもいいでしょうし、まったく標準にはないゲージというのも個人で楽しむ分にはいいと思いますね。
掲示板でHOn3の話題もありましたが、3フィートのナローで1/87だと10.5mmの線路になります。既製品の線路は期待できませんが、だったらレールをスパイクしていけばいいと思うのです。お座敷運転は無理ですが、ナローのレイアウトですからそれほど大きくなくても楽しめると思うのでスパイクしていって線路から作るというのも楽しいんじゃないかと思いますね。米国のレイアウト本(HOゲージ)だといとも簡単にレールをスパイクしてます(笑)ポイントまでスパイクして作ってますね。「Code40のポイントがない?簡単だ!自分で作ればいい」って書いてますよ。なければ作る!(あるなら利用した方がいいと思うけど)米国人の方が開拓精神旺盛なのかもしれない。。
スケールとゲージに関しては、いろいろと論議もありますが個人的には雰囲気さえ出ればいいかなぁと思ってます。
実物の何分の一ということに近づけようとしても所詮0にはならないわけで(ディスプレイモデルを作るんなら話は別ですけど)フランジも大きいですが、実物の1/220のフランジじゃ模型としては走行不可能ですよね?
何を重要視しているのかによって議論はすれ違いになってしまいますから堂々巡りになってしまいますよ。ま、ようするにバランスが大事だと思います。とにかく楽しめれば私は満足!