Z専用のDCCデコーダーが欲しい・・
DCCデコーダーも年々小型化が進み、Zゲージの車両にも十分搭載可能なサイズになっています。しかし、上の写真のように直接モーターへ配線したり、オリジナルの基板をパターンカットしたりして搭載する必要があり、高価な車両を元には戻らない形に改造するという手段しかありませんでした。一番問題なのは、動力周りのメンテナンスがかなり大変になることです。メルクリンZは1972年の発売以来、モーター他構造はほとんど変わっておらず、モーターのブラシ交換、掃除が必須です。メンテナンスは大変でも、構造が変わってないので30数年前の中古を手に入れてもパーツ交換でまた走らせることができるのは魅力的です。
日本製のドロップインデコーダー誕生へ
Zゲージ用の簡易に装着可能なデコーダーがまったくないわけではありませんが、ドイツ製で高価だったり不良やバグといった不安もあります。Zゲージにもドロップインデコーダーが欲しいなぁ・・などとモヤモヤと考えていた2007年の11月、PWMコントローラをお願いしていた永末さんから「メルクリンZ用のデコーダーを作ってもよい」とのお話をいただき、デコーダー製作が具体化することになりました。関東オフミでお話していた、なもさんにもご協力いただき上図のような基板案を作成していただきました。
いきなりそれぞれの専用基板を作るとなるとコストも掛かりますし、元々ユーザーの少ないZゲージですから数が出ない可能性大になります。基板製作等詳しくない方に補足しますと、電子回路の基板は大きさにもよりますが1枚ずつ製作するのではなく、ある程度の大きさの板に同じプリントパターンを作って後で切り離すことになります。板チョコを買うと食べる分だけ切り離しますよね?あんな感じです。板チョコと違うのは、1枚の元基板を作るコストが変わらないところでしょうか。例えば、1枚10万円掛かるとするとそこから1枚だけ切り出すと1枚10万円のままであり、40枚切り出すと1枚2500円で済むことになります。ですので、ある程度は一度に作らないとかなり高価なものになるわけです。そこで手持ちの車両のうち、改造しやすい「箱型」(ディーゼル、電機)に対象を絞り込むことにして、さらにネジ穴位置が共通であることから1種類の基板で対応できないかを検討いたしました。
最終的には、ちょうど中間のサイズとなるSBB Re460を基本にサイズを決めることにしました。
サクっと出来ているように見えますが、サイズの違う車両に搭載するために裏面のランド(端子)の位置を微妙に調整したりして苦労しています。なもさんに原寸大のボール紙の基板を作っていただいて調整いたしました。その節はなもさんありがとうございました!
最初の試作品は、2008年2月頃に出来上がりました。その後試験と関西メンバーにも送付して意見を求めて第一回の頒布を行うことにいたしました。第一回は45枚ほどでした。
半田付け作業は必須
簡単に脱着できるように設計されてはおりますが、モーターへの配線と前後ヘッドライトへの配線については各自で半田付けによる作業が必要になっています。これは車両によってヘッドライトまでの長さが違うことや、短い車両の場合には基板そのものをカットして短くする必要があるためです。
半田付けをしたことが無い方にはちょっと敷居が高いかもしれませんが、この機会にチャレンジしていただくかオフミ等で誰か作業してくれるお友達を作るというのもいいかもしれません。
ライトはLED専用
DCCのファンクションの使い方としては、Zの場合限られているので停止中のライトのON/OFFくらいしかありませんがそれはそれでなかなか楽しいものです。左はヘッドライト(停止中は減光、走行すると明るくなる)、右はテールライト(スイス仕様なので片目ライトがテールライトになっています)
一般的なデコーダーの場合は、ヘッドライトとテールライトにそれぞれ配線するように設計されていますが、メルクリンZ専用ということで車体側に付いているヘッドライト/テールライトをそのまま利用するために電気の極性を変える方式になっています。
電球タイプの車両は、上の写真のようにLEDを逆向きに接続すればヘッドライトとテールライトを点灯するように改造可能です。(ヘッドライト/テールライト間の遮光が面倒ですけども)
回路の簡略化、小型化のためにライト用の回路はマイコン出力が直接出ていますので、20mA程度の駆動しかできませんがLEDには十分な性能です。電球は使用不可です。
様々な「箱型」車両への搭載
BR185とBR103への搭載例です。BR103は電球をLEDに改装してあります。
BR218とBR601(VT11.5)への搭載例です。
箱型の電機、ディーゼルならば割りと問題なく搭載が可能です。車種ごとの搭載例詳細についてはそれぞれの記事を参照してください。また、搭載方法がわからない等ありましたら、DE25x4szrサポートフォーラムの方へ書きこんでいただければサポートできると思います。
DE25x4szr設定編
DE25x4szrはZ専用ですが、パラメータはZ用に最適化されていません。お手持ちのコマンドステーション等を使ってプログラミングする必要があります。
プログラミングと言っても各パラメータの値(CV値と言います)を書き換えるだけです。書き換え方法についてはお手持ちのコマンドステーションのマニュアルを参照して操作してください。
設定するCV値の一部を書いておきます。
CV | 説明 | デフォルト値 | 詳細説明 | 設定値 |
1 | 主アドレス | 3 | 動力車アドレス(任意) | |
2 | スタート電圧 | 0 | 2 | |
3 | 加速度 | 0 | 20 | |
4 | 減速度 | 0 | 20 | |
5 | 最大電圧 | 255 | 98 | |
6 | 中間電圧 | 0 | 48 | |
10 | EMFフィードバックカットアウト | 128 | 128 | |
29 | 内部設定#1 | 6 | Bit5Bit4Bit3
Bit2 Bit1 Bit0 |
6 |
33 | ヘッドライト減光 | 96 | F4で設定 | 96 |
34 | ヘッドライト照度 | 255 | 255 | |
55 | BEMFパラメータ I値 | 10 | KI | 10 |
56 | トルク補償 | 254 | 254 | |
57 | BEMFパラメータ P値 | 85 | KP | 85 |
60 | 機能設定 | 153 | Bit7=緊急減速機能 (128)
Bit6=停止時モーター固定(64) Bit5=総括時FX有効化 (32) Bit4=停止時減光 (16) Bit3=AckFull (8) Bit2=BEMF BRAKE (4) Bit1=トルク補償 (2) Bit0=BEMF (1) *( )CV値 |
29 |
CV1 機関車のアドレスです。それぞれ違う番号にします。
CV2
CV3 加速度 これはお好みで。速度を上げていくときの遅延です。
CV4 減速度 これはお好みで。
CV5 最大電圧 これもお好みで。
CV6 中間電圧
CV10 EMFフィードバックカットアウト
CV29 進行方向 7にすると反転する
CV33 ヘッドライト減光
CV34 ヘッドライト照度
CV55 BEMFパラメータ I値
CV56 トルク補償
CV57 BEMFパラメータ P値
CV60 機能設定
設定値については、この値で最適というわけではないと思われるのでまだまだ研究の余地がありますがすべて試す時間もありませんので、試された方はぜひともサポートフォーラムの方へ書き込んでください。
DE25x4szrのマニュアル、設定ファイルについては以下のURLを参照してください。
www.snjpn.com/ngdcc/de25/de25x4szrj.htm
購入方法について
DE25x4szrは現在のところ一般販売はありません。当サイトからの特注オーダーのみです。今のところ年一回程度のオーダーになっています。フォーラムへ書き込んでいただくか、左のメニューの「Contact Me」からメールにてリクエストしてください。前述のように数量が集まらないと製作できませんので、しばらく待っていただくかもしれませんのでご了承ください。
最小ロットは20枚です。
DE25x4szrは生産終了しました。(2008~2010年)
最後に
DCCの魅力は、配線が少なくなることや、場所を選ばず同じ線路上の車両をそれぞれ制御できる点など数々の本に記載されているかと思います。Zの場合には、スロー制御が可能になることやBEMF機能による定速制御によって急坂でもジェットコースター状態にならない点はメリットかと思います。いずれにしても一度、やってみるとその面白さに気がつくと思います。
ただし、DCC化したからといって性能が向上するわけではありません。メルクリンZの場合は、他のゲージに比べて車両が軽く集電能力が低い点や、前述のようにモーターのブラシ交換、掃除が必要ですので通常のパワーパックで走らせて調子の良い状態でDCC化することをお奨めいたします。通常のパワーパックでギクシャクする走りだとDCC化しても改善されるわけではありませんし、問題の切り分けが難しくなります。
DE25x4szrは、箱型車両用としては汎用性が高く、良くできたデコーダーだと思います。次のデコーダーの企画がなかなか思い浮かばないのもそのせいかと思っています(笑) また、永末さんにご協力いただき、国産で生産できている点も不具合やパラメータの調整など小回りが利くということで安心ですね。末永く愛用していきたいと思ってます。
2020年7月18日 追記
DE29x4szrについて(生産終了してます。2012年のみ)
DE25x4szrの後継として製造してもらったのがDE29x4szrです。
型番が印刷されているわけでもないので、見分け方は部品配置だけになります。
DE25とDE29の違いは、一部BUG修正とライト制御の違いです。x4となっていますが実際は6FXなのかもしれません。極性反転型にしているのでファンクション数はあまり意味がなく、個別に配線ができるわけでもありません。ただし、CV値の設定で1END、2ENDの設定が変更できます。設定についてはCV値リストをご覧いただいて設定してください。
クリックすると拡大します。
分からない点はフォーラムの方へご質問をお願いいたします。